5th。

「きゃっ。」
私は慌ててスカートのすそを押さえた。
風の強い日ってほんと嫌になる。スカートだと面倒だし。目にゴミは入るし。
春一番、ってやつなのかしら?別にそんなのなくていいのに。
スカートを気にしながらゆっくりと桜並木を歩いた。
──今日から新しい生活。初めての高校生活。
正確に言えば、昨日1日体験してるから「初めて」じゃないけど。
でも、昨日は入学式やっただけだし、私は緊張しちゃって周りなんて見えなかったから私にとっては今日が「初めて」。
と、言うことにしておく。しておかないとしばらく緊張が抜けなそうで嫌だしね。
どんな人達がいるのかなぁ…。クラスメートは入学式で会ったはずだけど顔なんて覚えていないからしっかりと見ておかなきゃ。
なんてことを思っていたら校門が見えてきた。
(あ、校門だ。)
私は少し口元が緩みながら校門へと歩いていった。
私は校門が見えたことが嬉しくて、スカートのことを忘れていたみたいだった。
と、また「春一番」の強い風が吹いた。
「きゃっ。」──バサッ。
小さい悲鳴と一緒にカバンが落ちた音がした。
スカートを急に意識したからカバンを離してしまったみたいだ。
「はい。大丈夫?」
急な出来事で目をつぶってしまっていたので声をかけられた意味が分からなかった。
「えっ?」
目を開けて声の主を見ると私のカバンを持った人がまっすぐ私を見ていた。
「あっ。は、はい。大丈夫です。ありがとうございます…。」
私は慌ててしまっていた。だって、声をかけてくれた人すごくかっこよかったから。
「季節の変わり目だからね。風が強いんだよね。」
そう言ってカバンを渡してくれた。
「そ、そうですね。…ほんと嫌になっちゃう。」
私の言葉に彼は笑った。笑顔が素敵でちょっと見とれてしまった。
「あっ。」
彼の手が私の顔に向かって伸びてきた。その瞬間、一気に鼓動が早くなる。
(──えっ?なに?)
彼の手は私の顔の横で止まり、何かを取った。
「桜の花びらがついてたんだよ。ほら。」
そう、指で摘んだ花びらを見せてまた微笑んだ。
「それじゃ、行こうか。」
私はまだ収まらない鼓動と、少し赤い顔に恥ずかしさを感じながら校門を彼と一緒にくぐった。
(ちょっとだけ「春一番」に感謝してみようかな。)
なんて思いながら、桜が舞う空を微笑んで仰いだ。
──今日から新しい生活。初めての高校生活。
───ほんのちょっとだけ、いいことがありそうな予感を感じていた。

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えっとですね、今、外の風が強(以下略)。
少し少女漫画を意識したものに(苦笑)
「風が強い」→「スカートが見える」てな感じで、想像を膨らませ、マリみてで補充した乙女心を注ぎ込んでみましたよ。
まぁ、「結構ありがちな物語の始まり」ということで。
この後の彼女の新生活はご想像にお任せします(笑)