22th『ワタシ』。

私の世界はとてもとても暗く卑しく構成されています。どこまでも暗く闇ばかりです。
助けを求めると苛められます。苛められるのは辛いです。辛いのは悲しくて泣いてしまいます。泣いてしまうと苛められるのでいつまでも終わりません。
助けて!と叫ぶと叫びを聞いて多くの人が私の元へ来ます。多くの人は私を見て通過します。通り過ぎます。通り過ぎる人の一人の袖を掴もうとすると、すり抜けて掴めません。世界はこのように出来ていることがわかった瞬間でした。
いつまでもいつまでも苛められ泣いているといつからか苛められている先で笑う声が聴こえてきます。涙を堪えて顔を上げると笑い声は消えてしまいました。
笑い声が何だったのかを考えるとまた苛められます。考えることを放棄して私はまた泣きます。泣いていると笑い声が聴こえます。その声は遠くで聴こえ、近くで聴こえます。少しずつ私は気が遠退いていってしまいました。
気が付くと私は何もありませんでした。服も着ていません。靴も履いていません。腕と足が見当たりません。体を見ようとしたら体がありません。何も聴こえません。何も見えません。叫ぼうとすると叫ぶ口がなくて叫べません。
何もなくなってしまいました。どうしたのでしょうか。どうすればいいのでしょうか。何も出来ません。怖くて泣きたくても泣く眼がありません。真っ白なのか真っ黒なのかもわかりません。怖くて暴れたくても手も足もないので何も出来ません。
気がおかしくなりそうです。おかしくなってしまったのでしょうか。おかしくなったのかもしれません。おかしくなってしまったのでしょう。私はおかしくなってしまったようです。
それがわかると笑い声が込み上げてきました。笑ったことのない私が笑いたくなりました。でも、笑う口がないので笑えません。それなのに笑ってしまいます。笑えなくて笑ってしまっています。笑って笑って笑えずに笑えなくなってしまって気が遠退いてしまいました。
気が付くと周りに私がいます。私が遠くで私を苛めています。私は泣いています。私は笑っています。泣いている私が笑っている私を見ています。それがとても可笑しくて笑います。
苛めている私は何も見ていません。ただ私は私を苛めています。苛められている私は遠くで笑っている私を見ています。笑っている私はただ笑っています。
可笑しいです。
悲しいです。
苛めたいです。
苛められたくありません。
笑っています。
泣いています。
世界は暗くて真っ白です。
世界は明るくて真っ黒です。
卑しくて嫌らしく、私は陵辱されて私に陵辱しています。
高尚な私は低俗な私を感じます。
低俗すぎる私は高尚すぎる私を見て笑います。
高尚すぎた私は無意味な私に陵辱されて泣きます。
世界の全ては私で構成されています。
私は私のものとなり、私であるがために私を生かし、殺して陵辱し、私を孕んで私を産み落とします。
産み落とされた私は産み落とした私に陵辱されて私を孕み私を産み落とします。
笑っている私は何もせずに笑うだけです。笑う私はこの世界の全てであり全ては私に帰依します。
私は私の世界でいつまでもいつまでも私を増やすのです。
私が私であるために
私を殺した私を呪うために。
私を生かした私を救うために。
私の世界は私です。
私が私になるために。私の血を濃くして。血が黒くなるまで。血が綺麗になるまで。
私の世界は犯された私を救うために存在される。
貴方の血はやがて私から消える。
私の望みはそれだけです。
無意味にワタシがワタシであるために。

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そろそろ載せておかないと前回から3ヶ月になってしまうので無理矢理気味に。
意味はありません。それだけなのです。