20th『最低な始まり<愛の終わり>』。

俺は今ちょっとばかり厄介なことに巻き込まれている。
最初は嘘だと思っていた。きっかけは今となっては見当もつかない。あんな女なんて御免だ。
何度追い返しても、何度断っても、何度拒絶してもあいつは諦めようともしない。
初めは俺がきっぱりと断り続けていればあいつも諦めると思っていた。
しかし、諦めようともしない。警察に相談する、と言う事を何度も考えたが相手は女、それに俺が警察嫌いなのも手伝ってそれは今までしなかった。
彼女に相談する訳にもいかない。変なことに巻き込んで怪我でもしたら女を殴ってしまいそうだから。
いくらあいつがストーカーでも『女を殴る』という行為は俺のプライドが許さなかった。
だが、そのくだらないプライドもそろそろ限界のようだった。
12月22日、あいつは彼女がいる前で俺に迫ってきやがった。
今まであいつのことを説明していなかったから、変に誤解されてそれからメールしても、彼女の部屋に行っても連絡がつかない。
本当だったら二人で過ごすイブは崩壊しそうだった。
そんなときにあいつから『お願いだから最後にするから会って。』等というメッセージがポストの中に入っていたんだから、限界になってもサンタもフェミニストも許してくれるだろう。
あいつの『お願い』も『最後』も見飽きたし聞き飽きていたから、会いに行かないで警察署に行く、というのが最善策なのだろうが、限界に来ていたため面と向かって最後通告をしに行くことにした。
会いに行くと、あいつはいきなり抱きついてきた。
何を言っているのか泣き声でさっぱりだったが、こんな所を誰かに見られて余計にややこしくなるのも嫌だったので、振りほどいて最後通告をした…はずだった。
振りほどき、最後通告をし、去ろうとした瞬間世界は暗転した。
気がつくと眼前に広がる世界は酷く暗く、苦しかった。
どうやら俺は目隠しをされているらしい…。目隠しを取ろうとしたのだが手が動かない…。足も動かない…。
体全体が麻痺していた。
頭と背中から感じる感触からベッドか何かに縛り付けられているようだ。
ゆっくりと焦る気持ちを抑え、思考を巡らし、状況を把握した。
「俺はあの女に最後通告をしに出かけた。そして、会っていきなり抱きつかれた。その後…その後だ。その後、俺は…?」
耳の横で熱い吐息と共に、嫌になるほど聞き飽きた声が返ってきた。
「貴方はあの後、私の部屋に来たのよ。ふふ。ちょっと強引だったけれど、全て私を拒む貴方がいけないんだから…。」
俺は驚きで目隠しの中で目を見開いた。そう、見開いたはずだった。しかし、何も変わらなかった。代わりに今まで感じたことのない嫌な感覚が襲ってきた。
「俺に、何を、した、んだ…?」
今まで気がつかなかったが、部屋は強すぎる女の香りと熱気で充満していた。
そして、その元凶が耳元で囁いた。
「貴方はここで私と愛を育むの。ずっとずぅぅと。永遠よ…。」
無駄だと分かっていても叫んだ。狂ったように叫んだ。暴れ叫んだ。
「お願い…大きな声を出さないで…体に響いちゃうわ…。」
その言葉で、気づくべきでないことに気づいてしまった。
からだ?ひびく?みえない?うごかない?
見えないんじゃない、見ることができないんだよ。
動かないんじゃない、動かすことができないんだよ。
俺は女に疑問をぶつけた。
「俺の目、腕、足をどうした…?」
「私の愛には必要ないから切っちゃった。あは。」
「なっ…。」
世界は暗転した。
「でも、私との愛の生活には問題ないわ。だって、んふ、こうして、貴方と繋がることができるんだから…。」
世界は堕落した。
「本当は、私だってこんなこと、んぅ、したく、なかったの。でも、貴方は逃げちゃうから。ぅぅんっ。」
世界は崩壊した。
「安心して、貴方の手足はずっと、あぁっ、私と共にあるから。私から貴方の手足の躍動が感じられるでしょ?くぅん、貴方の手足を食べたとき、私、んぅん、それだけでいっちゃったわ…。」
世界は消え去った。
「あぁん、貴方と結ばれることができるなんて、最高なクリスマスね。」
俺の最後のクリスマスは最低な始まりで終わった。

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20th達成ー。パチパチパチ。
19thの男サイドを打ってみたわけですが、やはりダメダメのグダグダですねぇ。。。
そんなわけで、彼女は壊れたダルマ男の死体を愛し続け、ダルマ男の彼女の死体に視姦され続けて、一人の愛の営みを繰り返し続けるのでした。
めでたしめでたし。