19th『愛の終わり<最低な始まり>』。

貴方は私がどんなに愛しても振り向いてくれなかった。
私の愛が足りなかったから?
私の愛が強すぎて貴方が臆してしまったから?
私が貴方のタイプじゃなかったから?
クエスチョンマークをいくつ考えてみてもわからない。わかるはずがない。
貴方の気持ちはずっと遠く彼方にあって届かない。
ずっと昔から貴方を見てきた。でも、見てるだけでは何も変わらないってわかっていた。
だから、私は貴方を求め始めた。自分の気持ちを素直に貴方にぶつけた。
なのに、それなのに、振り向いてくれない。
これじゃあ、見ていた頃よりも苦しい。求めることがこんなに苦しいんだったら求めなかった。
求めても求めても求めても求めても。いつまで経っても変わらない。
こんなにも苦しいのは何で?苦しさを解放するにはどうしたらいいの?
―何回目かわからない拒絶で私のどこかがこんなことを呟いた。
――あの人の気持ちを私の愛で満たそうよ…。すべて、私だけにしてしまえばあの人も私も満たされるわ…。すべて、それでが丸く納まるわ…。
私は黒くてとっても純粋な感情でいっぱいになっていった。
何度目だかわからない求愛は、私と彼の始まりとなった。
「なんで?どうしてっ!?こんなに愛しているのにわかってくれないの!?」
同じようなセリフを何度吐いたかわからない。でも、それがいつもと違うのは今日は彼が絶対に私の物に、私が彼の物になると言うこと。
密かにバッグの中に忍ばせていたスタンガンは予想以上に効いたみたいだった。
「本当はこんなことしたくないんだよ。でも、こうすることが貴方と私の運命だったの。」
そう、倒れている彼の背中に泣きながら言い、私は彼と共に自分の部屋に戻った。
最初は彼も怒っていたけれど、次第に私の愛が彼に通じ、彼の方から私を求めるようになった。
彼が私を初めて求めて時は、戸惑ってしまったけれど、彼の愛が私に充満していくのを感じたときは今までにないくらいの充実感だった。
彼が私に入ってくる。今まで、そう妄想するだけで達しそうだった。それが実際のことになった。夢が叶ったのだ。
それから、私と彼のめくるめく愛の物語が始まった。
しかし、二度目のクリスマスイブ、運命は彼と私に急に残酷になった。
私と彼の愛の巣のドアを激しく叩く音がし、どこで話を聞いたのか彼の昔の女がそこにはいた。
私達の愛の巣に勝手に入り込んで「なんで彼を監禁してるの」とか「彼を返しなさいよ」とか色々とうるさくする上に、彼の姿を見て悲鳴をあげるから近くにあった包丁で刺してみたら軽く痙攣をして簡単に死んでしまった。
邪魔な女の始末を聖なるイブにするなんて、なんて運命は残酷なんだろう…。
聖なる夜は彼とゆっくりと過ごすって決めていたのに…。
私は今更計画を変更するなんて癪だったので女を部屋の隅に追いやって、彼との甘い様子を見物させることにした。
どう?彼と私はこんなに愛し合っているのよ?貴女が彼と付き合っていた時、彼はこんなに凄かった?ほら、彼も貴女を冷たい目で見ているわ。ほら、彼と私が愛し合っている音が、声が聞こえる?羨ましいでしょう?うふふ。もう、彼と私の間には誰の邪魔なんかさせないわ。私がこの愛を守るんだから。聞いてるの?あ、そっか、私が殺しちゃったんだっけ。あははなんだか貴女に見られて興奮してきちゃった彼もいつもよりも凄いわそうだ決めた貴女は一生ここで私と彼の生活を見続けなさい私の彼を一瞬でも奪った罪を償うのよこれで私達はずっと興奮できるわねぇ貴方も賛成でしょうんそうよね私の言うことを何でも聞いてくれる貴方だものやっぱり賛成してくれるわよねあぁ素敵な夜だわこんなに満ち溢れているのは貴方と初めて結ばれた時以来よあれから毎日しているけれどこんなに興奮しているのは久々だわあぁっもういきそう貴方もいきそうなのねいいわお願い一緒にいきましょう…。
こうして彼と私の甘いクリスマスイブは更けていった。
来年も再来年もずっとずっと素敵なクリスマスにしましょうね。
そう、私は彼に言うのだった。
冷たく腐臭の充満するこの部屋で愛しの愛しの彼と共に私は誓い合った。

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んー、もっともっと絶望的な方面に行けると思ったのですけれど、途中で疲れてしまってこんな生温い感じになってしまいましたな。
そんな訳で、皆様メリークリスマスでした。