17th『オモイビト』。

一月三日午後八時。酔いに任せて二度目の電話。
一度目、貴女は入浴中。二度目の電話で繋がった。
一年ぶりに聞く声はあの頃とちっとも変わらずに。
出会った頃の貴女は、周りから少し嫌われていた。
ほんの些細なきっかけで、そんな貴女に惹かれてた。それは初めての経験で。初めて想ったヒトだった。
一年ぶりのその声で、髪を切ったんだよ、と言う貴女。
黒い髪を二つに縛ったその髪が、とてもとっても可愛くて。
夏に会った時のいつもと違う髪型が、余計に可愛く思えた。
一年ぶりに交わす言葉で、初めて告白したした時に、困った顔が向こうから聞こえた。
そんな顔が可愛くて。可愛い、と素直に告げると余計に困った顔だった。
あれから数年、貴女は幸せに暮らしていますか?
髪を二つに縛った人を見る度に、僕は貴女が浮かんでた。
オレンジに染まるたんぼ道。自転車の影が長く二つ伸び。そんな景色が懐かしい。
アナタのナカにボクはソンザイしますか?
ボクのナカのアナタはずっと髪が長いままです。