14th「涙、咲き乱れ」。

ささやかで。さり気なく。小さいけれど、そんな積み重ねが幸せで。
彼と二日に一回くらいのペースで逢って。駅から夕食を食べに手を繋いで歩いて。
その日にあった他愛もないことを笑いながら話したり。その日にあった嫌なことを彼にこぼしたり。
逢えなくても一日一回は来るメールが楽しみで、嬉しくて。
そんな毎日をとても愛おしく感じていた。
過ぎた幸せは同じように、明日も来ると思っていた。当たり前だった。
見つめられれば暖かく。繋いでくれると元気になれて。抱き締めてくれたら強くなれた。
でも。
それはちょっとしたことで。
ほんの些細なきっかけで。
壊れ、崩れた。
いつからか私は幸せを辛く感じていた。
怖かった。
きっかけなんてなかったのかもしれないけれど。ずっと自分を騙していたのかもしれないけれど。
幸せだったのは本当で。嬉しかったのも事実だった。
それでも、今はそれが痛かった。
ふと。
目を閉じたら初めての夜が浮かび上がった。
その日の私はとても幸せになれた。気持ちと心が。愛と体が初めて一つになった気がしたから。
幾月流れ、私は今、最後の夜を過ごしていた。
そろそろ彼の部屋を出ようと思ったとき、涙が溢れてきた。
私は彼に気付かれないように泣いた。気付かれていたのかもしれないけれど涙を流した。
部屋を出るとき、私は仮面を被った。彼にだけは見えない笑顔を被った。
さようなら。ありがとう。幸せでした。
貴方のお陰で私は強くなれました。
最後の涙は心の中で咲き乱れ続けた。

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一ヶ月と少しぶりのSSですー。
あー、前回のは打ち切りという形になるかと思われますがご勘弁を。
今回のは「涙が咲く」っていう言葉からこんな形に。
本当は幸せのまんまのSSがあって、それと組み合わせて「10時台のドラマにありそうな大人の女の別れ」みたいのになってしまいました(苦笑)
んー、これ、面白いのかな?
まぁ、俺は産み終わったときとか楽しかったんで一応は良いのですけれど。
では、徹夜明けなんで寝てきます。