10th。

俺はあの女と出逢ってしまってから変わった。
それが運命という名の必然なのか、一目惚れという名の偶然なのかは知らない。別に知らなくてもいいことだ。どちらにしたって同じなのだから。
『言葉』という代物では言い表すことのできることができない程に魅力的で、魅惑的で、扇情的で。
常に幻惑されているかのように可愛らしく、その一瞬一瞬が夢心地で。
その瞳に俺は惑わされ、その声に俺は狂わされ、その存在に俺は壊された。
女を見ているだけでここまで幸せに、触れているだけでここまで満たされることは初めてだった。
女に惑い、狂い、壊れることは初めてではない。ここまで恋わされることが初めてだった。
全てを捧げたい。全てを投げ出したい。全て、あの女のために。
そう心底思える女なのだ。そう心の底から。そう体の奥から。
心が、体が、細胞一つ一つの全てが願い、感じ、想っていた。
全てをお前に。この世の全てを。願う物は全て。欲する物は全て。
この女がいることが俺の全て。それ以外は付属物だ。
このまま俺はずっと、いつまでも。これが夢でも、世界が終わろうとも。
この女に恋わされ続けたい。塵の如く粉々に。そして融けてしまいたい。
『恋わされる』。
それだけが『俺』の生きる──生かされる価値だ。
今の『俺』にはそれしかないのだから。

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久々ですね。なんとか4月中に10個目までいけてちょっとだけ安堵してます。
そのうち3つほどが続き物なので、実質的には10個じゃないのですがね。
とりあえず今回は「恋わされる」という言葉が使いたかっただけのSSです。
もうちょっと色々と幅を利かせることも出来たと思うのですけどねぇ。。。
終わらせてしまったんで今更何を弁明したって無駄なのですけどね。